「幻」のルーツ、リンゴ酵母
純米大吟醸「幻」のルーツは、1940年(昭和15年)に4代目中尾清磨(なかおきよま)が発見したリンゴ酵母に始まります。
酵母が日本酒の味と香りに大きく影響を及ぼすことを知った4代目中尾清磨は、1927年(昭和2年)頃から
東京帝国大学の発酵学教室で坂口謹一郎先生(後に酒の神様と称された学者)に師事し酵母の研究を始めます。
当時の発酵学教室には、キッコーマンの茂木氏なども在席されていました。
2000種以上の酵母から、最高のものを
様々な場所から採取した酵母の発酵試験を繰り返し、日本酒の発酵に必要な
3つの能力(発酵、香り、酸味)について優れている酵母を探し続けました。
自然界において、3つの能力を全て兼ね備えた酵母を見つけ出すことは
奇跡とも言えるほど確率が低いことでした。信念と根気が必要な作業です。
清磨は4年後の1930年頃には広島の蔵に戻りますが、帰ってからも酵母の研究に没頭しました。
そして、試験を始めてから14年の年月が経過し、試した酵母の数が2,000種を超えた頃、
ついに抜群の芳香(吟醸香)を放つ酵母に出会います。
しかも、それはアルコール発酵力が強く、爽やかな酸を生成するという3拍子が完全に揃った奇跡とも言える酵母との出会いでした。
また、さらに当時としては珍しい、発酵で泡の出ない酵母でもありました。
その酵母は、リンゴの果皮から採取されたことから、後にリンゴ酵母と命名されます。
酵母が分離されたリンゴは、清磨が所用で出かけた広島県呉市の街を歩いていたときに、
たまたま八百屋に並べられていた真っ赤なリンゴが目に止まり、買い求めたものでした